2017.03.15

企業の取り組み:スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

インタビュー日:2017年02月28日

スターバックス ジャパン 株式会社

【インタビュー】

高坂 裕二さん(人事本部 人事部 コーポレート人事グループダイバーシティ&インクルージョンチーム)
前田 由紀さん(人事本部 人事部 コーポレート人事グループダイバーシティ&インクルージョンチーム)

ーー御社のダイバーシティやLGBTに関する取り組みについて聞かせてください。

高坂さんまずダイバーシティ全体に関しては、他社さんでもやられていると思いますが障がい者雇用が割合としては一番大きいです。
次に現状力を入れているのが、LGBTの制度を導入するというところですね。今後弊社で働くパートナーの皆さんにどう正しい人事をしていくかという、理解向上活動といったところですね。
あとは、我々スターバックスジャパンとして取り組んでいるダイバーシティであったり、LGBTへの取り組みといったところをきちんと社会の人にも伝えて、我々の会社を理解して欲しいなと思っています。
あと今後は助成活動ですとか、外国人の雇用ですね。高齢者の方も含めた様々な方の雇用がダイバーシティかなと思います。

ーーLGBTの制度導入に関して教えていただけますか?

高坂さん:では、制度導入の経緯からお話しします。
前田さん:もともと、スターバックス自体がセクシュアリティをオープンにして働いている方が多くて、そこまで制度の必要に迫られるという感覚がはじめはなかったんですね。ですけれども、あるきっかけがあったんです。
それは去年の新卒採用の際、一人の従業員が会社宛に「トランスジェンダーのパートナーを家族として登録してください」と、手続き上の書類の中にメモを同封していたことです。
それでその時に、〝誰でも活躍できる文化〟というのを謳ってはいるものの、制度として登録する際に具体的なところが追いついていなかったと気づかされたんです。

ーーその3月のきっかけから制度導入が1月と、動きが早いですね。

高坂さん:いえいえ、もっと早くやるべきだったと思っていますよ。そこから環境に関する話がすぐに社内であがりました。

ーーそれからの約8ヶ月の間、どういった動きをされてたんですか?

高坂さん:まず、我々の他に日本でLGBTの取り組みをしていらっしゃる企業の方とお話しの機会を設けさせていただいて、そこで他社さんのことを生の声で伺って勉強させていただきました。
そうして得たことをもとに、「スターバックスジャパンとして何ができるんだろう?」というところにもう一度立ち戻りました。同時にアメリカのスターバックス本社では、LGBTに関する取り組みはかなり進んでいたので、そちらのマネージャーとコンタクトを取りながら「どういうことをやっていて、どういう制度があるのか」といった情報をいただいて、日本仕様にプロモーザルを作っていきました。

ーーそうして導入された制度の詳細はどういったものでしょう?

前田さん:ハラスメントの規定の中に、去年の10月から性自認や性的指向について明記しています。
また、登録をした同性のパートナーを規定上の配偶者として婚姻と同等に認めるという制度があります。なので社内の中ではありますが家族として休暇制度などを取ることができます。
あと、それまでも性別適合手術は傷病休暇で対応していたんですが、今年1月から性別適合手術の特別休暇というものを作りました。
高坂さん:どうしても別立ててやりたかったんですよね。性別適合手術を病気扱いするのはどうなのかと議論を重ねて、病気ではないという意味合いを込めて別の休暇にしました。
日本でこれをやっているのは今のところうちだけですね。
他社さんのやられていることだけを導入するのではなくその先を見たいというか、個人やパートナーそれぞれの違いを考えた時に何ができるだろう、と思って。
ちなみにイギリスのスターバックスではそこへの補助金も出ています。

ーーアメリカ本社で導入されていることを日本仕様に、となった時、どういったところを変えたんですか?

高坂さん:同性パートナーシップの場合は、アメリカの方が厳しいのですが、日本ではより公平性を持つために制度を受けやすくしています。
アメリカでは「同居しているか、生計を共にしているか」といった細かい書類が必要なんですが、日本の我々で議論をした結果、日本では本人が申請すればそれでいいということになりました。男女のカップルではいらないのに同性だけ書類が増えるとなると、公平ではないじゃないですか。そういった証明書を提出しない代わりに、今は必ず人事と面談を行って制度の趣旨を理解してもらい、人事も申請側の思いや状況を聞いて、お互い把握し合うようにしています。
配慮しなければいけない面もあるので、「どの程度カミングアウトされているのか」「もし自身が亡くなった場合、会社支給の死亡保険金の受け取りは誰にするのか」といったことをすり合わせてから登録していただいています。
こうしたコミュニケーションは大切にしていますね。メリットもデメリットも考えた上で登録してほしいので、生半可な気持ちではよくないですし、ひとりひとりと向き合う意味でも面談をしています。

ーー今現在制度を利用されている方はどのくらいいらっしゃいますか?差し支えのない範囲で教えてください。

前田さん:今は同性パートナーは4組ですね。

ーー導入にあたって、社員の皆様の声はどう聞かれたんですか?

前田さん:LGBT当事者非当事者を問わず、各店舗の店長が集まる会議で話し合い、反応を見ましたね。
その中にもLGBT当事者と共に働いている、過去働いたことがある、という声もあったので、導入の後押しになりました。そこから何をどう取り入れるか話が膨らんでいきました。

ーーLGBTの就活生の悩みとして、スーツのことやトイレなど男女別にされがちなものがよく出るのですが、御社ではいかがですか?

高坂さん:就活の段階でも、「スーツで」という指定もないですし、トイレといった設備面に関しては建物自体で決まりごとがあったり、我々だけではどうにもならない部分もあるのですが、できる限りは配慮したいので、店舗開発チームにお話したりしています。
誰でもトイレを設置している店舗が多いので土台はできているという感じです。

ーーこれから就活をするLGBTに向けてメッセージをお願いします。

高坂さん:誰にとっても自分の居場所、というのが弊社の基盤になっているので、LGBTに関わらず、外国籍でも、障がい者でも、その他でも、同じ目線で我々の会社の求めているものに合う方であればぜひ入社していただきたいです。

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