2015.04.20
インタビュー日:2015年04月16日
【インタビュー】
-ジェイソン・ケンディさん(広報部)
-フランソワ・モリさん(グループテクノロジー部)
-堀 久美子さん(コミュニティ アフェアーズ、 ダイバーシティ&インクルージョン)
-牛山 竜太朗さん(人事部)
ジェイソンさん:社内には『PRIDEネットワーク』というLGBTとアライの従業員ネットワークがあります。スイスやニューヨーク、ロンドン、アジアなどグローバルでも展開しており、日本では2008年に設立しました。フランソワと私が日本の『PRIDEネットワーク』の共同代表をしています。設立後2、3年は参加者が少なかったのですが、現在は65名程までメンバーが増えました。
『PRIDEネットワーク』では、ピクニック等ネットワーキングのためのイベントを開催したり、他の金融機関と連携による『LGBTファイナンス』で活動をしています。昨年は、UBSのグローバル・エコノミストであるポール・ドノバン氏を招いて社内セッションを行いましたが、社内外から多くの参加者があり大成功を収めました。
フランソワさん:ポールによる社内セッションでは、同性婚やパートナーシップが認められていなかったり、ストレートの人に認められている権利がLGBTの人に認められないことで、平等な権利がある国に人材が流出し経済的損失につながる、という研究についてプレゼンテーションがありました。
堀さん:ポールはこの研究をロンドンで発表し、大きな評価を受けました。これは経済の観点から検証しているため、現実的で説得力があります。
牛山さん:経済効果について考察なので、LGBTではない人たちにも「あなたにも関係があるんだよ」と伝える上でもとても有意義だと思います。何か行動しないと、という思いに繋がりやすいですよね。
堀さん:2013年には、ランチタイム・セッションに「パートナーシップ特別配偶者法全国ネットワーク」の弁護士の方々を招いて、日本でのパートナーシップ法や同性婚についてパネルディスカションをしていただきました。
ジェイソンさん:セッションには30名ほどの社員が参加し、パネルディスカションでは、ロビイングの成果や各党の声などを共有してもらいました。
堀さん:このようなイベントの案内は、『PRIDEネットワーク』のメンバーだけではなく全社員に送っています。東京プライドパレードや東京国際レズビアン&ゲイ映画祭など、UBSが「LGBTファイナンス」としてスポンサーとなっているイベントに関しても全社員に案内を出しています。
堀さん:LGBT学生向け企業説明会は、2008年から、5回実施しています。LGBTの学生が真に求めているセッションにしたいと、企画段階からLGBTの学生を招き、意見を交換しながら実施に向け準備しました。一緒に企画することで「都市部から離れるとLGBT学生向けの機会が少ない」という学生たちの声も聞くことができ、北海道や関西など遠方から来る学生の旅費をUBSが一部負担しました。参加した学生の中には匿名やニックネームなどでの登録を希望する人もおられ、そのような希望にひとつひとつできる限り対応し、説明会の開催に至りました。
2013年以降、様々な企業で同様の取り組みが始まり、今年はLGBTファイナンスでのセミナーのように、業界全体でLGBTの学生に向けたセミナーができることは素晴らしいことですし、今後もサポートしたいと考えています。
ジェイソンさん:LGBTファイナンスは、金融業界の企業15社が参加しているLGBTネットワークです。当初は、主に外資系金融機関のLGBTグループが中心となって立ち上げました。各企業内のLGBTネットワークが繋がることで、イベントへのスポンサー活動等に取り組みやすくなりますし、よりインパクトの高いことができるようになるなどメリットがあります。現在は、毎月LGBTファイナンスの参加企業で電話会議を催しています。金融業界で働くことがLGBTの方にとって一つの選択肢であってほしいと思い、業界をあげて取り組んでいます。
ジェイソンさん:一つには経済的な理由が挙げられます。才能がある人が離職すると、企業としてもコストがかかってしまいます。コスト面から見ても優秀な人材は引き留めたい。でも、LGBTにとって働きづらい職場環境だと彼らは辞めてしまいます。女性や他のマイノリティにも共通して言えることですが、優秀な人材に働き続けてもらう職場であるためにも、LGBTやダイバーシティへの取り組みは重要です。
また、LGBTが職場で自身のセクシュアリティを隠すことで、業務の生産性が下がるという調査があります。金融業界で働く人の一定数はLGBTです。その人たちが自分らしく働けないことで才能を出し切れないとしたら大変残念ですし、経済的にも生産性が下がることでコストがかかってしまいます。
堀さん:UBSでは社員に選ばれる職場でありたいと思い、その一環としてダイバーシティに取り組んでいます。LGBTの社員が100%自分を出しきって仕事ができない状況は、企業にとっても損失に繋がります。ポールが述べていた、差別は経済にもマイナスのインパクトを与えるということは、国だけでなく企業にも当てはまります。
フランソワさん:職場の中で可視化を進めることが、社会の中での可視化にも影響すると思います。LGBTの人が身近にいないと思うことで、理解不足により差別が生じやすくなってしまうのです。アメリカで2013年にあったProposition8という同性婚に反対する法律にかかわる最高裁判決の際も、LGBTの権利を守るためUBSはLGBTのサポーターであることを表明し、ウォール街にレインボーフラッグを掲げました。
堀さん:現代社会は多様性に富んでいるからこそ、多様なお客様構成と、私たち社員の構成を同じくしようと努めています。それにより、多様性への理解が深まり、お客様との良好なコミュニケーションが生まれ信頼して頂けます。お客様にとって最善のことを考えると、ビジネス戦略としてもダイバーシティが重要であることがわかります。LGBTだけではなく、人種、年齢、ジェンダー、障害の有無など全てにあてはまることです。
UBSにはLGBTについて考える『PRIDEネットワーク』の他に、子どもをもつ社員のための『OyaConnect』、ジェンダーや女性のリーダーシップについて考える『All Bar None』、そして障害をもつ社員のための『disAbility』があります。Aが大文字であるのは、できないことではなくできることに着目しようという意味を込めています。『disAbility』では主にろうの社員とともに手話セッションやろう文化の理解に関するイベントなどを行っています。
ジェイソンさん:『PRIDEネットワーク』以外には特別な対応は特にありません。いい環境をつくることが目的であり、特別な扱いをせずに済むようになることを目指しています。
堀さん:基本的には他の社員と同様ですが、特別な配慮が必要な場合は対応します。過去には、MtFトランスジェンダーの社員が性別移行をするにあたり、本人や上司、人事部などでチームをつくって対応したケースがあります。本人は、アジア各地域のオフィスにいる社員とも仕事をしていたため、関係する全社員の理解とコミュニケーションを円滑に進めることを目的とするプランを立てました。本人の希望を受け、業務上緊密に関わる30人以上の社員一人ひとりとのミーティングを設けました。グループだと言い難いこともあるかもしれないという配慮からです。また、ドレスコードや化粧室の使用についても本人の希望を聴いた上で方針を決め、総務部等関連部署とも情報を共有しました。その後、社外のMtFの方を招き、全社向けにMtF/FtMに関するセッションを設けました。多くの社員が参加してくれましたが、特に同じ部署の社員はほとんど全員が参加してくれました。性別適合手術の際や性別移行期間には集中的に変化が起こるということで、合理的配慮としてこのような対応をしました。
フランソワさん:私は去年母国のフランスで日本人の男性と結婚しました。UBSでは、結婚休暇やその他結婚に関わる福利厚生などは同性婚に対しても適用しており、他の社員と同等に扱われています。
ジェイソンさん: 金融に興味がありハードに働くこともいとわないのであれば、優秀なLGBTの方にとって金融業界はとても働きやすい環境だと思います。
堀さん:過去のUBSのLGBT学生向け企業説明会でも当社役員が述べておりましたが、「LGBTだから」ということではなく、「自分はどんなキャリアを積みたいのか」について考えることが大切だと思います。あなたにとってそれが金融業界で働くことであれば、私たちは必要なサポートをしますし、そういう方たちに選ばれる企業・業界でありたいと努めています。LGBTだからといって自分自身で限界を設けず、あなたが何をしたいのか考え行動することを大切にしてほしいと思います。
【企業情報】
150 年の伝統を誇るUBS は、スイスのチューリッヒおよびバーゼルに本拠を置き、世界の主要金融市場を含む50 カ国以上で事業を展開する総合金融機関です。約60,000人の従業員を擁しており、内35%が米州、36%がスイス、17%がスイス以外の欧州・中東・アフリカ地域、12%がアジア太平洋地域に在籍しています。
日本においてはUBS証券株式会社、UBS銀行東京支店、UBSグローバル・アセット・マネジメント株式会社の三法人を通じて、法人・機関投資家および富裕層個人のお客様向けに様々な金融商品とサービスを提供しています。