2016.03.1

「もし相談を受けたら?」LGBT就活生を大人の立場から考える

2016年2月24日、日本財団ビルにおいて、自立支援労働者向け「LGBT公開講座」@日本財団が開催されました。

参加者は企業の方、大学のキャリアセンターの方、就労支援の活動をされている方など。

本講座はReBit代表理事・藥師実芳の挨拶から始まりました。

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LGBTの説明で、最も覚えてほしい2つのこと

スライドを使って行われた、LGBT基礎知識の解説では、セクシュアリティに関する沢山の用語が出てきます。

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しかし藥師は、「これらの用語を全て覚えてほしいというよりも、ここから今日持ち帰っていただきたいことは2つです。」と語りました。その2つとは、

・体の性別だけでセクシュアリティは決まらない
・男、女、で分けることは難しい

ということでした。

実際に、体や見た目で一方的に性別を判断されやすいのが社会の現状であり、働く上では履歴書といった書類上やトイレ、更衣室、制服など、男女だけで分けられがちなことが多くありますね。
この2つのことを参加者の皆様にお伝えしていくことで、セクシュアリティの決めつけが減り、多様な性の在り方の認識が広がっていくのではないでしょうか。

さらに藥師は「人の数だけセクシュアリティがある、と思っていただければ」と続けました。

 

学生が語りかけるライフヒストリー

次に行われたのは、今回ReBitから参加した2名のLGBT当事者の学生を交えたライフヒストリーです。参加者のテーブルに各学生が加わり、その半生と想いを伝えました。

XジェンダーでMtXの大学2年生・ゆずまは、「男の子として生まれ育った子どもの頃、女の子と仲良く遊んでいたら周りから『キモイ』などと言われてしまいました。」と、自身の性のあり方や周囲の反応に悩んだ過去を振り返ります。
「その後、学校の授業でジェンダーという科目があって、男女だけじゃないんだ!とセクシュアリティの広さを知ることができたんです。」と、徐々にありのままの自分で過ごすようになっていく過程を語りました。
ゆずまは現在、より自分らしく生きるために通称名を本名にしようと動いているとのこと。

パンセクシュアル女性の大学4年生・かなこは、自身の就職活動についてこう語りかけました。
「セクシュアリティって就活に関係あるの?とよく思われるんですが、実は関係していて、私の場合は東京で就職するか、地元に帰って就職するのかという点で重要でした。地元で就職するならカミングアウトしていない知人と会うかもしれないですし、例えば同性のパートナーと一緒に住むことになった時に『あそこの家、女二人で住んでるけどどういう関係?』と噂されたりしないか、といった懸念があったんです。」
不安がある一方で、就職活動中に嬉しかったエピソードもあると言います。
「面接で話す中でカミングアウトをした際に、『あなたは社会に対して公平に目を向けている。それを活かしてほしい』『LGBTだからこそ他のマイノリティのことを考えられることもあるんじゃない?』と言っていただいたこともあって、嬉しかったです。」
そんなかなこが就活での企業選びで重視したことは、〝何らかのマイノリティ支援のしている会社であること〟でした。

テーブルごとのライフヒストリーの後、全体に向けて藥師のライフヒストリーも語られ、それぞれの言葉に熱心にメモを取る参加者の方々の姿が見受けられました。

 

LGBTの「はたらく」について

「LGBT当事者の就労では、企業方針や職種といった内容以前に『まず話を聞いてもらえるのか?』という心配から足が遠のいてしまうことがある……」
再びの全体講義はこんな言葉から始まりました。ここからはLGBTの「はたらく」における困難が解説されます。
学生時代にロールモデルがいないとキャリア形成のイメージが持てない、就労支援者に知識がないと適切な支援が受けられないカミングアウトの有無など、LGBTがどんなことで困りやすいのかが順を追って具体例と共に述べられました。

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また、差別禁止の明文化や社内研修の実施、複利厚生や就活生への対応など、企業のLGBTに対する取り組みが紹介されました。

※社内研修についてはこちらの記事もご参考ください。

 

参加者が自らの立場でLGBTの就労支援に向き合う

参加者の方々によるケース検討のワークショップでは、

・就活に不安を感じているMtFの大学3年生
・入社1年目でハラスメントに悩むレズビアン

の例が配られ、どの問題点をどう解決できるかが話し合われました。参加者が自身の職業や立場から実践できること考え活発な意見交換の場となりました。
なかでも今回多かったのは「まず本人に寄り添って話を聞く」というものでした。これはLGBTに限らず、就活・就労に不安を抱えている多くの人への手助けの一歩になると思います。

もし自分がこの相談を受けたら、という真剣な姿勢で行われたケース検討への振り返りの後、ReBitからLGBT支援のために今日からできることの紹介をし、今回の自立支援労働者向け「LGBT公開講座」は終了となりました。

LGBTの就労においては様々な課題があります。ですが今回の参加者の皆様のように、そこに真摯に向き合う就労支援者の方が増えることによって、着実に解決されていくのではないでしょうか。

(角 亜維子)

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