2015.04.14

2015年3月19日、NECにて「LGBT就活トークライブ」を開催しました

2015年3月19日、働くLGBTとのトークイベント「LGBT就活トークライブ!」が開催されました。
「自分らしくはたらく」をテーマに、5名の社会人によるパネルディスカッションや、小グループでの質疑応答が行われ、来場者・関係者を含め70名近くの方にご参加頂きました。

LGBT就活トークライブ_写真1

中:中島 潤(なかじま じゅん)さん
ディチャーム株式会社勤務、要介護シニア向けサービスに従事。社会人歴3年、FtXトランスジェンダー。

右:藥師 実芳(やくし みか)さん
特定非営利活動法人ReBit代表理事。前職はweb広告代理店に勤務。社会人歴3年、FtMトランスジェンダー・パンセクシュアル。

 

「履歴書の男女欄とスーツどうしよう、から始まった就職活動」

中島さん:現在は社内でカミングアウトをし、スーツ着用の際はメンズスーツ、そうでないときはボーイッシュな恰好で勤務しています。しかし、就職活動では、履歴書の男女の性別欄のどちらに丸をするのか、面接の際のスーツや、そもそもカミングアウトをして就職活動をするのかなど、たくさん悩みました。
僕の場合は、自分のことをわかってもらえる企業で働いた方が活躍できるのでは、また多様性を受け入れている企業のほうが他の面でも自分と価値観が合うのではと思い、カミングアウトして就職活動をすることにしました。就活中、、一部の企業では「そういう事例は取り扱ったことがないので……」「うちは無理だと思います」というお返事を頂くこともありました。しかし、現在自分が働いている企業をはじめ、日系の企業でも、「今まで受け入れたことはないけれど、大丈夫だと思います」というお返事を頂くことも多かったです。「外資系でないと受け入れてもらえないのでは」と思っていたので、いい意味でのギャップでした。

藥師さん:遡ると、自身がトランスジェンダーであると認識した小学校5、6年生のときから「自分って働けないんじゃないのかなあ」と不安に思っていました。当時の僕からはLGBTの社会人の姿が見えなかったので将来が描けず、また身近に相談できる人もおらず、葛藤をずっと抱えていました。

LGBT就活トークライブ_写真2

左:小寺 毅(こでら たけし)さん
株式会社はぐくむ代表。中学校時代にソ連とアメリカで過ごした経験から、多様な生き方が認められる社会をはぐくむことを目指す。
中:平山 裕三(ひらやま ゆうぞう)さん
株式会社はぐくむに勤務し、教育事業に従事。前職は某大手通信会社に勤務。社会人歴7年、ゲイ。
右:今津那奈子(いまづ ななこ)さん
ドイツ証券株式会社で営業に従事。社会人歴8年、レズビアン。

 

「生い立ちや価値観に触れる質問に、答えられないジレンマに苦しんだ」

平山さん:就職活動では生い立ちや価値観に触れる質問があるので、そういった質問を受けたときには、狼狽しながら「僕、ゲイなんです」と答えたり、セクシュアリティを言わずにふわっと答えていたのを覚えています。でもそうすると、落ちちゃう。それはゲイだからではなくて、なぜその仕事をやりたいのかを話せないことで、相手に響かない。僕は就活のときは、そのジレンマに苦しんでいたなと思います。また、前職では職場でカミングアウトしていなかったため、休日の話やパートナーの話をするのが苦手でした。僕の場合は彼氏がいたときは彼女に置き換えて言っていて。本当は会社の人とプライベートな話で打ち解けたいけど、できないから飲み会なども憂鬱でした。

中島さん:就活の初めの段階ではセクシュアリティのことが大きすぎて、自分がどう生きたいかではなく、どうやってセクシュアリティの壁を乗り越えるかが就活の命題になっていました。僕自身「自分らしくはたらく」ことをようやく今になって考えられるようになりましたが、以前のテーマは「働けるのか」でした。会社という組織や日本という社会の中で、仕事ができるのか、社会人になれるのか、と。丸三年仕事をする中で、働けるということが自分の中で腹落ちし、周囲に支えられているなということを就活のときとは違う角度で実感するようになったので、ここからまたスタートしたいなと思っています。

 

「就活の段階で決めつけなくてもいい、悩みすぎなくてもいい」

今津さん:私は、アナリストとして入社しました。アナリストという仕事は、いろんな会社にいって、その会社が今後どうなるかということを数字などを用いて、自分でストーリーを作っていかなくてはいけないのです。私はデータ整理やプレゼンが好きなので、「私はスーパーアナリストになれる」と思って入社したのですが、働く中で「私はストーリーを作ることが苦手だ」ということに気づいて、営業に移りました。アナリストが持ってきたレポートをどう解釈して、お客様にそれを伝えるかという、営業の役割が自分には合っていると、就活当時は気付けなかったけど、働き始めてからわかった。就活のときにはわからなくても、働き始めてからわかることってたくさんあって、就活で終わりではないと思う。就活の段階で決めつけなくてもいい、悩みすぎなくてもいいと思います。

 

「働く=仕事、だけではない」

今津さん:仕事が嫌だなあと感じるときでも、どうリフレッシュするかや、どう面白さを見出すのかということも大事だと思っています。例えば、「カメラマンの人って自分のやりたいことをやっていてすごく羨ましいな」と思っていたのですが、「実は別のアーティストが撮りたい」という人がいたり。外から見ると羨ましく見えるのですが、実際は誰しも悩みややりたくないこともあって、その折り合いをつけていくのも「自分らしくはたらく」上で大事だと感じます。

藥師さん:就活のときは、「就活=会社に入る」と考えていたのですが、働くってお金を得て活動するっていうことに限定しているのではなく、自分が生きる上でする活動全体を指していて、働くことってそういう場所を探していくってことなのかなと考えています。パラレルキャリアということで、お金を得るための仕事と、自分のやりたいことを両方持つ人もいるし、ボランティアやプロボノをされる方もたくさんいます。働くってどこかで生きることと繋がっていると感じているので、問い続けることが大事だと思っています。

 

「自分らしくはたらくことは、セクシュアリティの側面だけではない」

平山さん:「自分らしくはたらく」ということには二つの側面があると感じます。仕事への関わり方での「自分らしさ」と、仕事内容の「自分らしさ」です。仕事への関わり方での「自分らしさ」というのは、セクシュアリティだけが大きくなりがちですが、それ以外にもたくさんの自分の側面があります。また、仕事内容の「自分らしさ」というのは、仕事内容が自分の人生に直結しているのか、ということです。
LGBTの人の中には、「自分ってなんだろう」とか「性別ってなんだろう」と、自分自身に問いかけてきた人も多いと思います。だからこそ、生きづらさもあると思うけれど、自身と向き合うことで人生の中で大事にしたいことが見えてくると思うし、今度は未来に向けて「自分はどういう人生を生きていきたいんだろう」と自問していけると、自分らしい働き方が見つかってくるのでは、と思います。

 

「社会も、自分も、変わっていく」

中島さん:まず一つは、自分の就活の頃を思い出したときに、こういう場所ってなかったな、と思うんですね。こういう形で集まれる場所ができたことがとても嬉しいです。

小寺さん:こういう場所ってなかったと聞くと、社会って変わることを実感しますね。物事って変わっていくんだっていう感覚を皆さんにお伝えしたいと思います。今は欲しいものがないのかもしれない。欲しいものをやりたいと思ってもできないのかもしれない。今はそう思っても、未来はそれができるかもしれない、変わっていくかもしれないと思っていることが大切だと思います。

平山さん:同時に自分も変わっていけるという感覚も持っていてほしいと思います。自分は今ゲイだとカミングアウトして働いていますが、社会人になる前にこういう風に働けるなんて思ってもみなかった。少しずつ階段を登るように変わっていって、だんだん鎧を脱いでいくような。それはセクシュアリティっていう鎧もあるんですが、それ以外でも「こうしなきゃいけない」という思い込みをどんどん脱げるようになると身軽になれました。

小寺さん:今日伝えたいメッセージがあるとすれば、「変われる」ということ。今どういう状況であれ、感覚的にこう生きたい、いけるかもしれないという、希望の感覚が広がるほどに変われる。変わると昔が嘘みたいに感じられるようになるのではないかなと。そのメッセージをお伝えしたいなと思います。

 

「企業は、多様な価値観をぶつけあって、新しい解決策を生み出す人たちを求めている」

最後に、NECのCSR・社会貢献室の藤井様よりご挨拶を掲載させて頂きます。

藤井さん:NECでは社会起業家を応援するプログラム「NEC社会起業塾」を2002年より実施しており、今年度の支援先団体の一つであるReBitとともにこの会を開催することとなりました。2年前にNECでは中期計画を発表しましたが、「社会価値創造型企業」ということで、社会に対して貢献するビジネスや活動をしようと、ビジョンを掲げました。社会課題はとても多様ですし、同じような考え方の人たちだけでは知恵が出ません。多様な考え方の人や特性を持った人がいろんな意見を出し合って、クリエイティブにイノベーションを起こしていくことが必要になると思います。だからこそ、多様な価値観をぶつけ合って、新しい解決策を生み出す人たちを、いろいろな企業が求めていると思います。

社会も、企業も、そして参加者自身も「変わっていく」ことが実感できた一日でした。「自分らしくはたらく」の答えは人の数だけありますが、それを考える場をこれからも創っていきたいと思います。

 

開催概要

日時:2015年3月19日(木) 18時〜21時
場所:NEC本社ビル B1F 多目的ホールⅡ(〒108-8001 東京都港区芝5-7-1)
主催:特定非営利活動法人ReBit、株式会社はぐくむ
共催:NEC

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