2015.04.13

インタビュー:藥師実芳

所属:認定NPO法人 ReBit

役職:代表理事

年齢:25歳

セクシュアリティ:FtM/パンセクシュアル

インタビュー日:2015年03月25日

藥師実芳

ヤクシミカ

出身歴: 京都生まれ、3歳から9歳までをアメリカ、9歳から17歳を神奈川県で育つ。現在東京都在住。

「性同一性障害=はたらけない」と思った小学校6年生

小学校4年生でアメリカから帰国すると、「女の子のグループで遊びなさい」「女の子はあぐらをかかないの」など、「女の子なんだから」と指導を受けることが多くなりました。
人生で初めて自分が「女の子」であると認識するとともに、自分らしくいれない違和感を感じました。

そんな中、小学校6年生のときにドラマで性同一性障害という言葉を知り、「自分、これかも!」と思いました。

夜な夜なインターネットで調べるも、「治療をしたら30歳で死ぬ」「仕事ができない」などの情報しかありませんでした。
今となっては全部誤情報とわかるけれど、小学校6年生の僕はそれらを鵜呑みにし、バレないようにと「女の子らしく」振る舞いました。
でも、それは全然自分らしくなくて、毎晩布団で泣いていました。身近にLGBTのオトナのロールモデルもおらず、どう生きていけるのかわかりませんでした。

 

男とか女の前に人であれ

18歳から、男性として生きるようになりました。
でも、周りからどのような性別で見られているのかいつも気になり、過度に「男らしく」振る舞う自分は、あまり自分らしくありませんでした。

FtMの先輩がそんな僕を見かねて「藥師がなりたい人ってどんな人?」と質問されたことがあります。
「優しくって、面白くって..」と僕が羅列をすると、その人は言いました。
「それって男とか女とか関係あるの?男とか女になろうとする前に、自分が成りたい人になれ」。

 

ずっと「女らしさ」とか「男らしさ」にこだわっていた僕にとって、とても衝撃的な言葉でした。
そして、そこから性別にこだわらず「自分らしく」生きようと思えるようになりました。

 

夢が叶った、のか?

「自分らしく」生きよう、と決めたものの、どのように生きていけばいいのかわからないままでした。

戸籍が女性である僕が男性としてはたらくとしたらカミングアウトをしないとならないけれど、カミングアウトしたらはたらけないのでは?といつも不安でした。
就職活動の際も落ちる度に、セクシュアリティのせいなのでは?と頭をよぎりましたし、実際にセクハラやパワハラを受けることもありました。

 

結局は50社程度でカミングアウトをし、2社から内定。
新卒でweb広告代理店に就職し、毎日が刺激的でした。上司も同期も僕がFtMであることを受け入れてくれました。

小さい頃から「とにかく男性としてはたらきたい」と思っていた僕にとっては、夢が叶ったという喜びでいっぱいでした。

でも、入社から半年で会社を辞めました。
「男性としてはたらきたい」そこにばかり固執していた僕にとって、自分がなにをしてはたらきたいのか、どう生きていきたいのか、考えれていなかったことに気がつき、これって自分がしたいこと?の疑問が自分の中で日々拡大していきました。

 

どう生きても、誰もが誰かのロールモデル

ある人が「どう生きても、誰もが誰かのロールモデル。好きに生きればいい」と言ってくれたことをきっかけに、LGBTをはじめとした子どもたちの養育環境の改善に取り組みたいとの想いから、退社しNPO法人を立ち上げました。
現在はLGBTについての研修を教育現場で実施、全国でのLGBT成人式というイベントの運営、LGBTの就活生の応援などをしています。

今後、僕の所属や肩書きは変わっていくかもしれません。でも、いつだって「LGBT含めたすべての子どもがありのままでオトナになれる社会」の実現に向けた、自分らしい役割を担っていきたいと思います。

 

「LGBTだから」ではなく「自分だから」どう働きたいのか

自分の就活を振り返り、自分が一番自分のセクシュアリティにとらわれていた、と感じます。

気付けばセクシュアリティが自分のはたらくを考える上での最重要軸になり、自分がどんな仕事がしたいのか、どう生きていきたいのかをふまえたキャリアやライフプランを考えられていませんでした。

 

はたらくと言っても、企業に就職することだけが選択肢ではありませんし、日本に限定して考える必要もありません。
また、LGBTの就活支援をする中で多くの企業の方とお話の機会を頂く中で、日本の企業のLGBT社員や就活生に対しての意識の高まりを感じます。

だからこそ、セクシュアリティはあくまで自分の一部であることを前提とし、「LGBTだから」ではなく「自分だから」どう働きたいのか、そしてどう生きていきたいのか。はたらくことと生きることはやはり関係性が深いからこと、そのことを大事に、自分らしいはたらくを考えてほしいと願っています。

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